環境ビジネスレポートの抜粋記事
http://www.ecobiz.co.jp/ (環境ビジネスネットワーク)


山梨県甲府市で塗料の卸・小売りを営む向山塗料がISO14001の認証を獲得したのは

98年4月。まだまだ、一部の大手企業での獲得がほとんどだった頃に、山梨県ではトップ

シュアの塗料ディーラーとはいえ、従業員数18名、年商10億円強(当時)、輸出企業でもない

同社が認証取得を目指し、果たしたことは周囲を大いに驚かせた。「(最近よくあるように

大手の)取引先から言われたわけでもない。だから最初は社員からも驚かれましたよ」

と向山邦史社長は当時を振り返る。

きっかけは95年。末期がんから再起した元経営者が、地球環境保全の大切さを説く

という講演を聞いたこと。それまでは向山社長も年々売上げ2割アップの目標を掲げ

拡大路線をひた走る経営者の1人だった。アメリカの塗料業界への現状視察に

出かけたり、財務体質の安定化、経営の健全性にも心を砕いた。だが、この講演

を聞いたことで経営方針を地球環境との共生へと大きく変換した。「地球環境という大きな

テーマを持って生きる先達の話に衝撃的な感銘を受けた。いくら儲けても、地球自体が

持続できなければ意味がない。真の永続的経営を志向したとき、顧客満足度と同時に

経営活動の基盤である地球環境を満足させるという発想に行き着いた。

早速取り組んだのがISO14001の認証取得だった。通常の業務に加え、ISO取得に向けての業務が

発生するため社員も最初は乗り気ではなかったものの、部長などの協力もあり取り組みを

開始した。当初はサイトが小さいということもあり通常の半分の期間である6ヵ月での取得

を計画したが、試行錯誤で取り組む部分が多く苦労した。それでもわずか8ヶ月で取得、

県内を問わず塗装業界・小規模小売業で初の取得となった。

取得から3年近くが経過、現在では社内も隅々にまで環境管理が行き届いている。

書類のコピーにはカレンダーの裏紙が使用されているのは当然のこととして、日中、

日差しがあるときは店頭の大半が消灯されている。やや薄暗い感じはするがそれほど

気にはならない。空調も冬は暖房を使用しているが、夏はまったく冷房を使わない。

初めうちこそ苦情を言うお客様もいたが、ほとんどのお客様がこの趣旨を理解し、

協力的だったという。

最終的にはこれらの取り組みにより最大で200ボルト電源の8割をカット。さらに

ガソリンの使用もアイドリングストップや配送ルートの見直しで16%削減した。

この他にも無駄といえなくもない御中元や御歳暮をやめるなどして、「年商10億円

程度の当社においても、トータルで1500万円の経費を節約することができた。

1500万円の純利益を稼ごうとすれば、うちではおよそ3億円の売上げに相当します」

同社では人数が少ないこともあり、全員参加で取り組みを行なった。社員1人で

何役もこなすため必然的にそれぞれの環境意識、スキルは非常に高い。今ではこうした

社員がボランティアで地域企業のISO取得のコンサルティングを行なうまでに成長、

彼らを指導で取得に至った企業も出てきている。

現在、同社では、会社の規模を拡大しない、最小限必要経営などを柱とした

GESM(地球環境満足経営)を経営方針としている。「前年比5〜10%の売上ダウン

が目標」というから奇想天外だ。「企業活動はどんなに環境経営を実践しても少なからず

環境負に負荷を与えてしまうのは避けられない。地球環境が限界にきている現状を考えると

経済活動のみを優先して売上を上げることに疑問を感じた。とくに当社のように油脂製品を

扱っているのであれば、地球環境と共生する経営を減速させていくやり方しかない」とその

理由を語る。

しかし売上を下げるからといっても倒産はしない計算になっている。売上をが下がっても

その分、環境マネージメントシステムによる徹底した経費削減で利益は確保できる財務体質

を確立しているからだ。売上高を7億円まで下げても社員の給与・賞与は維持できるという。

実際、同社ではこの方針に添って7年前か売上を削減していく計画を立てている。根気前年比

8%程度のダウンを想定。方針決定後は顧客の新規開拓は一切やっていない。同社は経営

姿勢に共感する業者からの取引は断わらない。そのため、心ならずも売上は横ばい、あるいは

微減で計画通りに削減できていないのが現状だ。「ともあれ、売上を追わないこの方針は周囲

から理解され難いのは承知しています。しかし、これからの時代はこれぐらいの発想転換が

求められてくる」


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